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 島がほとんど見渡す事のできる場所。それはこの島で一番高い場所であろう、F−6の山の頂上。そこから見える風景は都会では見ることの出来ない、自然にあふれた光景である。その絶景とも言える風景も、夕焼けに赤く照らされた後、暗闇に沈もうとしていた。風景を見ることはおろか、50メートル先が見えるかどうかも危うくなってきている。山頂から少し下ったところに洞穴があり、その洞穴の中で天童勇貴(男子9番)矢乃友理(女子13番)は震えていた。二人でよりそい、洞穴の一番奥で、洞穴の入り口を睨みつけたまま。勇貴の手にはベレッタM92Fが握られていた。
「私達・・・さ、後何日ぐらい生きられるんだろうね?」
「・・・・・・」
友理のか細い声が洞穴の中に響いた。あまり聞きなれない友理の声。普段の声、喜んでいる時の声、怒っている時の声・・・覚えていない。しかし、今の彼女の声からは悲痛しか感じられなかった。
「・・・もし、残り三人になるまで見つからなければ・・・何とかなるかもしれない」
勇貴の低い声が洞窟の壁に反響し、耳に残った。
「・・・でも、私か勇貴くん・・・どっちかが・・・」
勇貴の顔を見ず、下を向いたまま友理がつぶやいた。
「そんな事は、後で考えればいい。今は今を生き抜くための事を考えよう」
勇貴も友理を一瞥することもなく、正面を向いたまま答える。そのとき、誰かが洞窟の入り口を横切ったような気がした。足音はしない。もう薄暗いから見間違えたのだろうか。『勘違いかもしれない』とは思ってる。しかし、勇貴の心のどこかでは油断するな、と叫んでいた。
「もし・・・もしさ、」
友理が口を開いた。入り口に神経を集中させていたため、いささか驚いた。
「ちょ、ちょっと静にしてくれ。誰か・・・いるのかもしれない」
勇貴の言葉を聞き、友理も驚いて入り口を睨みつける。数秒後、カン、という音が洞窟内に響いた。ゴロゴロゴロ、と石の転がるような音を立てながら勇貴たちに近づいてきた。小石に行く手を遮られ、転がってきたものがピタっと止まる。友理はペンライトを急いで取り出し、転がってきた物を照らした。即座に二人の表情が凍りつく。転がってきたのは紛れもなく、手榴弾だ。
「しまっ・・・」
「キャァァァァァァァァァ」
前方が眩しいほどの光線を放ち、勇貴と友理は口々にうめき、叫んだ。1秒と経たないうちに、ドォォォォン、という轟音が鳴り響いた。衝撃で付近が揺れたような気がした。
「フ、フー、俺は悪くない。俺は悪くない。おま、おま・・・お前らがそんなところにいたのが悪いんだ」
田中渡(男子7番)は、自らをなだめる様に独り言をつぶやいた。今ので手榴弾はもうない。後は、敵から奪い取ったスナイパーライフルだけである。
「そ、そう、そうだ。武器・・・武器回収しなきゃ」
自らは爆発に巻き込まれないように離れていたので、少し戻って洞窟に入ろうとする。爆発が起こった・・・もとい、爆発を起こした直後なので、舞っている砂、ほこり、火薬の匂いが洞窟に入ろうとする気持ちを抑制する。
「だ、ダメだ。武器取って、武器取ってこなきゃ・・・誰かに殺される」
意を決して中に飛び込む。意外と洞窟は深く、視界は最悪だったが、すぐに見慣れた制服を来た人間が横たわっているのが見えた。小屋のときほど、バラバラにはなっておらず、ヒトの形はとどめていた。
「フー、フー、フー、フー・・・」
わけもなく息が荒くなる。渡の握るペンライトが、一人の持つ銃をとらえた。見を低くしながらおそるおそる、渡は銃を奪い取る。
「あなたも・・・一緒に・・・」
身を低くしていた渡の背後で、女の声が聞こえた。渡が驚いて振り返ると、そこには制服がボロボロになった友理が立っていた。勇貴が自分をかばったのだ。一瞬だったから、全てかばう事は出来なかったが、友理は重傷を免れた。代償として、勇貴は即死してしまったが。友理の右手の所で、カチリ、という音が小さく鳴った。直後、頭上が崩れ落ちてきた。
「私の武器は・・・私のスイッチによって起爆する・・・プラスチック爆弾・・・」
それだけ言い残すと、落ちてきた岩が友理の頭を直撃し、あっさりと友理は絶命した。
「いやだ・・・いやだ・・・いやだァァァァァ」
まるで子供のように泣き叫ぶ渡。しかし、それで洞窟の崩壊が止められるはずもなかった。凄まじい崩壊音がしばらく鳴り響いた後、この山にまた、静寂が訪れた。いつもと何ら変わりのない、山頂の様子。ただ、天然の洞窟がどこにも見当たらなくなってしまったのであった。



天童勇貴(男子9番)
矢乃友理(女子13番)
田中渡(男子7番)
死亡【残り11人+5人】

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